「空飛ぶ坑夫の家族」
ポロロン♪
ゲフェンの街の片隅で一人のバードがハープを鳴らした。
「ちょっとそこ行くお兄さん。
お急ぎでなければわたしの話を聞いてみないか?
なあに、別に金を取ろうっていうんじゃない。
わたしの話は決して金儲けの道具にはならないんだ。
そりゃあ、狩りのための矢代にも困っちゃいるがね。
さっきもそこの露店開いてるBSさんに安く矢を売ってくれないかと聞いたんだがね。」
ッピーン♪
甲高い弦が一本だけ響く。
「『矢代がない?そんなやつに矢を売るなんて嫌だい』って言われちまったよ。」
するとあたりは水を打ったように静かになる。
「お、止まってくれたってことは、話を聞く気になってくれたのかい?
OK。じゃあ始めようか。
今日の話はわたしの知り合いのウィザードから聞いた話でね。
切なく、悲しいが、決して寂しい話じゃあない。」
ポロロン♪




「ここより北に行ったところで飛行船に乗れるってのはあんたも知ってるだろう?
その中のゲーム場の入り口にいる初老の男、カインというんだが知ってるか?
わたしの知り合いのウィザードはふらりとゲーム場に入ろうとしたら、話好きのそのカインにつかまってね。
そこで彼の昔話を聞いたんだってさ。
彼は昔、誇りある坑夫だったんだが事故で怪我をして引退を余儀なくされたんだ。
そこで彼は酒に溺れてしまった。
愛する妻と娘は彼を助けようと頑張ったんだが、そこでも運命は彼に悲劇を用意していた。」
ボーン♪
低く太い音があたりを支配する。
「なんと、妻が過労と病で倒れ、そしてそのまま起きることなく妻は天国に逝ってしまった。
娘を知人に預け、自分は故郷を出たカイン。
酒に溺れ、荒れたままあっちへふらり、こっちへふらり
やがて彼の傷ついた心を時間が癒し、無事に飛行船の乗務員になるんだが
時既に遅し。
娘を預けた知人は連絡がつかず、彼が持っていた大切なものは全て失ってしまった後だった。
そんな辛い人生を歩んできた彼だが、今はもう真っ当な人間に戻り、いつも飛行船で働いている。
興味があったら会いに行ってみるといい。
あくせくと忙しそうに働く彼に会えるに違いない。
そう、忙しい彼はそこでウィザードに頼みごとをしたんだ。
「お客様で忘れ物をした方がいまして、届けてもらえませんか?」
当座の用事もなく、たまたま行き先が忘れ物の主がいる場所だったこともあり、ウィザードは快く引き受けたのさ。」
ポロン♪
明るい音がハープの弦から飛び跳ねた。
「そう、そのウィザードこそ、カインに待つ次の運命だったんだ。
ウィザードは指定されたホテルに行った。
そしてそこで出会ったのが、坑夫の歌を歌う少女。
ウィザードは不思議に首をかしげた。
だってその少女にはどこかで見た面影があったんだから。
初対面の少女はウィザードにかわいい声をかける。
「この歌はね、お母さんが歌ってくれるの」
心のひっかかりを取るためにウィザードは彼女の母親を訪ねる。
ここでウィザードのひっかかりは確信に変わる。
何せその母親の顔といったらカインそっくりなんだから。
憶えているかい?
カインの娘は知人に預けられたまま連絡がとれなくなったんだ。
彼女は「父親はもうすでに死んでいるでしょう」なんて言うが、とんでもない。
ウィザードはすぐさま飛行船に飛んで帰ったんだ。
何か親子を証明するものはないか?ってね。
そのあとはウィザードが東奔西走して泥だらけになってその証を探す話だが、まあ、おいておこう。
あんただってつまらない話を聞きたくは無いだろう?
話の主役はカイン親子だからね。
ウィザードは努力の末、亡くなった妻の日記を発見できた。
そこには彼女が結婚してからの、仲睦まじい様子、娘の誕生に喜ぶ様子、怪我した夫の失意、そして衰えていく自分への不安が克明に綴られていたんだ。
その手記から、娘は昔火傷を負ったことがわかった。
ウィザードは走ったそうだよ。
全く、そのウィザードの表情といったら、他人事なのにまるで自分のことのように喜んで走ってたそうだ。」
ポロロロロン♪
軽やかなハープの音色が街角を彩り
ピン・・・・・♪
一番の盛り上がりで音楽は急に途切れた。
バードは客の顔をじんわりを眺め、ゆっくり息を吸った。
「娘の手には、日記に書いてあったとおりの火傷痕があったんだ。」
ポロン♪ポロン♪ポロン♪
「あとのことはわたしが語るまでもないだろう。
カインも、その娘も、涙を流し喜んだ。
その様子がそっくりだったことはやはり彼らが親子であることのさらなる証だったんだろう。
カインは飛行船から離れるわけにはいかないが、彼の孫から送られた絵葉書は今も彼のデスクに飾ってあるそうだよ。
離れていても、家族ってのはいいものだね。」
ピーン♪
「今日の話はここまでだ。
どうだった?
これはアインブロックの家族の話だ。
アインブロックのホテルの裏に行けば、その家族に会えるはずだよ。
あんたも、一人でうろうろしてないで自分の家族探しでもしてみたらどうだ?」
ポロロン♪
「お前はどうなんだ?だって?
わたしは永遠の独り身さ。
わたしの恋人はこのハープだけで十分。」
バードはゆったりとした動作でハープをしまうとニヒルに笑った。
「『このハープを持ってるだけで、わたしの周りはハープニングだらけだからね』。
恋人を作って巻き込まれたら大変だろう?
まあ、そういうわけだ。じゃあな」
そして彼はどこかへと歩いていった。
あとにはただ氷付けになった人々が残るのみ。
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by phirosu2 | 2006-04-02 19:49 | 【RO】吟遊詩人 | Comments(0)
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