【TRPG雑感?】
ここは都内のとあるカフェ、を模したTRPGショップ。
おいしいコーヒーの香りがする店内にはいくつか机が並んでおり、
壁にはTRPGのルールブックが並び、
机からは談笑の声とダイスを転がす音がする。
とある夕暮れ、一人の少年がショップの奥のコーヒーコーナーに来た。
それに気がついたマスターは淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ。
少年「ありがとう……」
少年は何か言いたそうにカップから浮かぶ湯気を見つめる。
マスター「どうかしたかい?」
少年「……ちょっと聞いてよマスター」
マスターは隅に置いてあった椅子をひっぱってきて、少年に座るよう促す。
座ってコーヒーを一口飲むと、少年は堰を切ったように話しだした。
少年「さっきのセッションなんだけどさ。カケルのやつ、ずっとひたすら演技ばっかしてるんだよ」
マスター「カケル?」
少年「あ、カケルってのは俺のサークルで仲良いやつで、いつもPC1とかやってるんだ。確かにあいつが喋ると盛り上がるんだけどさ。今日の俺のシナリオは戦闘重視のシナリオだったのに、いちいち喋るせいで戦闘が超長引いてさ。結局最後ボスの切り札出せなかったんだ」
マスターはふむ、と頷いて、カップを一口すする。
マスター「なるほど。君がやろうとしたセッションとカケル君のやろうとしたセッションがずれてしまってたんだね」
少年「今日は俺がGMなんだから、俺に合わせるべきじゃない? そう思うでしょマスター?」
マスター「それはどうだろうね。セッションはGMとPL全員で作るものだからね。GMに合わせればいいというものでもない」
少年「えー」
マスター「たまに君のセッションを見ていると、戦闘重視なことが多いよね」
少年「うん」
マスター「じゃあ、これを使ってみるといいかもしれない」
マスターは棚から『カオスフレア』と書かれたルールブックを取り出した。
マスター「これはカオスフレアというゲームで、非常にデータが多い」
少年「まじで?」
マスター「やっぱり、データが多いゲームは好きかい?」
少年「うん!」
マスター「でも、カオスフレアはそれだけじゃない。他人のロールを評価するシステムがある」
少年「他人のロールを評価する?」
マスター「そう。君は戦闘を重視する。きっとカケル君はロールを重視しているんじゃないかな。そのずれが、このシステムなら埋められるかもしれない」
少年「??」
マスター「ええと、あれはどこだったかな」
マスターは棚から1冊の紙束を取り出した。
マスター「カオスフレアで、カケル君をPC1にして、このシナリオをやってみるといい。カケル君には事前に『思い切りロールしていい』と言っておくんだ」
少年「ええ、あいつにロールしろっていうとセッション長引くんだけど……」
マスター「セッション時間を気にするなら、PLを3人でやるといい。カオスフレアはロールすればロールするほど戦闘で有利になるゲームなんだ。君も戦闘で盛り上げたいなら、カケル君のロールをきちんと評価してあげなきゃいけない」
少年「……」
マスター「戦闘とロールは決して相入れないものじゃない。このゲームとこのシナリオなら、きっとそれがわかるはずだよ」
少年「わかった。……マスターがそういうならやってみるよ」
数日後、少年は顔を輝かせてコーヒーコーナーにやってくる。
少年の隣には、同い年ぐらいの少年が一緒にいる。
少年「マスター! カオスフレア超楽しかった!」
マスター「そうかい、それはよかった。こちらは? カケル君かい?」
少年「そうそう。こいつカケル。さっきのセッションでPC1で、めっちゃかっこいい台詞言ったやつ!」
マスター「ああ、あの台詞か。盛り上がっていたからわたしにも聞こえていたよ」
カケルは恥ずかしそうにぺこりと頭を下げる。
カケル「ありがとうございました。いつもこいつのシナリオって戦闘ばっかでちょっとって思ってたんですけど、カオスフレアは戦闘のためにロールしなきゃいけないって言われて、少し困ったんですけど、楽しかったです」
少年「そうそう。本当すごかった。マスターありがとね!」
マスター「まあ、たまたま昔似たようなことがあったからね。また困ったことがあったら相談に乗るよ」
少年&カケル「はい。ありがとうございました!」
こんなマスターみたいな人になりたい。
立場的にも人格的にも。
とりあえずはTRPGができるカフェを自分で持つところから始めよう。