吟遊詩人の回避方法
最近、2つの興味深いセッションを経験した。

1つはNW2のキャンペーン。
GMは熟練ベテランのTSさん。
今回の日記では、こちらをケース1と呼ぶ。

1つはカオスフレアの単発。
GMは初心者の青梅さん。
今回の日記では、こちらをケース2と呼ぶ。

ケース1は「吟遊詩人らしいがそうは感じなかったセッション」であり、
ケース2は「吟遊詩人なセッション」であった。
そんな2つのセッションを短期間に経験したので、その差異について考えてみたい。






ちなみに、この2つの事例、どちらがGMとして上手いかといえば当然TSさんのケース1である。
というのも当然で、2人のGM経験はセッション回数で換算すると恐らく100倍以上の差があるからだ。

ただし、どんなにGM回数が多くて上手いGMでも吟遊詩人になることはある。
TSさんは、今回書くようなことを無意識にやってるから回避できたのかもしれないし、たまたま偶然かもしれない。
青梅さんは、正直初心者GMが吟遊詩人になるのは一度は通る道なので、仕方ない。
今回書くようなことを意識すれば、簡単に吟遊詩人じゃなくなるかもしれない。

あと、一応お約束として、この日記はフィロスの主観によるものなので、一般論とは大きくかけ離れている場合があります。
もちろん、一般に応用できるように頑張ってますが、「俺のとこじゃ通じないな」とか思ったらつっこんでやってください。
サンプルは多いほうが事実に近づけます。

というわけで、面倒なお約束な議論を先にささっと片付けたところで本題に入ろう。

まずは『吟遊詩人』の定義から。
一般的な吟遊詩人とは、恐らく「自分で用意したシナリオを読み上げる」ようなGM、またはマスタリングのことを『吟遊詩人』と呼ぶのだろう。
それはさながら、吟遊詩人が練習した詩を歌うかのように朗々と読み上げられるわけだ。
アドリブがない、と表現してもいいのかもしれない。

しかし、ケース1の場合、(シナリオを見たわけじゃないから断言できないが)TSさんは用意された演出を、こちらの行動に合わせて読み上げているだけのようだった。
特にアドリブを加えるでもないわけだ。
これでは、一般的な吟遊詩人にはまりかねない。

そこで、自分は『吟遊詩人』を以下のように定義する。

『吟遊詩人とは、強制力が強いマスタリング、またはそうするGMである』

強制力という言葉はあまり一般的ではないかもしれないので、少し解説する。
PCの行動で微妙に左右される状況にあわせてシナリオを微調整するのがGMの仕事である。
それを「PCにシナリオをあわせる」のではなく「シナリオにPCをつきあわせる」から吟遊詩人になると思うわけだ。
このあわせ具合が強い=強制力が強い、と、ここでは定義する。

ケース2で例えるなら、
PCたちが「さて、どうしようか?」と相談しているときに、GMから「ヒントは広場にありますよ」と神の声がかかる。
それに従ってPCたちは広場に行く。
これは非常に『強制力の強い誘導』だと言える。

ケース1で例えるなら、
村の倉庫にある金庫には大事そうに鍵がかかっていて、それ以前の調査で、村長の家の位置がわかっている。
実際のセッションでは、PCたちが村長の家に鍵を探しに行った。
しかしこれは、途中で他に寄ることもできるし、ぶっちゃけ、金庫を破壊して開けようとすることもできる。
つまり、『強制力の弱い誘導』だと言える。

これをケース2のように、
「金庫の鍵は村長の家にありますよ」とGMが言うと「じゃ、とりあえず行こうか」という安易な行動になりかねない。
強制力の強い誘導になるのだ。

今回のケースではないが、PCたちがシナリオ中にどんな行動をしようとも、BOSSとの対決場所が同じだったり、PCがどう行動しても結局死んでしまうNPCなども、強制力が強いと言えるだろう。

このように強制力の強い誘導は、吟遊詩人的な行動につながると考えられる。


では、『吟遊詩人』の定義ができたところで、それを回避するためにはどうしたらいいだろうか?
定義がはっきりしていれば、解決方法も簡単である。
『強制しない』
これにつきる。
以前の日記で「ダンジョンハックは吟遊詩人ぽくならない」と言ったのは、やはり強制されるわけではなく、能動的に罠を調べ、聞き耳を立て、扉を開け、宝箱を漁るからこそ吟遊詩人ぽくないのだろう。
今書いていて思い出したが、ダンジョンハックでも「罠調べる?」とか「どうする? 部屋に入る?」とかあんまり言われると、誘導されてる感じがして、ある意味詩人ぽいなぁと思ったことがあった。
用意したトラップに入って欲しかったんだろうなぁ(笑)。

『強制しない』ために重要なのは『用意したシナリオを捨てる勇気』だと思う。
誰だって、長い時間をかけて考えたシナリオは公開したいと思う。
当然だ。
自分だって、セッションやるたびに「泣く泣くシナリオを捨てました」という言葉を吐いているぐらいそれは辛いことだ。
しかし、用意されたシナリオを知らないPLサイドから見れば、どこかのある一点に向かって誘導されているということがわかるのは「強制されている」と感じることなのではないだろうか?
だからこそ、もしもPCたちが用意したシナリオから外れても、元に戻そうとするのではなく、勇気を持ってシナリオを捨てることが「強制しない」ことに重要だと考えられる。

とはいえ、シナリオを捨てて真っ白な未来に即席で地図を描けるほど人は賢くない。
少なくとも自分はそうじゃない(笑)。
たま~に「オープニングだけ用意して、あとはアドリブで」とかいうGMがいるが、それは上手いのではなく、手抜きだと考える。
ここで重要になるのは実は誘導しているのに、誘導しているように見えないギミックなのではないだろうか。

……やっと本題だ。
書きたかったのはここからのことなんだ(笑)。

閑話休題。
もちろん、一番簡単なのは「どんなに脱線されても逸脱しないシナリオ」だろう。
PCがどんな行動をしても、その先にきちんと道があれば、GMが慌てることはない。
っていうか、それなら誘導する必要性すらなくなる。
しかし、まあ、GMの頭は1つに対してPLは大抵3~4人だ。
物理的に考えて、その想像をカバーできるわけはない。
それだけのシナリオを把握するのも大変だしね。
現実的ではないだろう。

いくつか、例示をしながら、そのギミックを紹介していこう。
ここで紹介するのは基本的にFEARでいうミドルフェイズにおける情報収集のギミックが多い。
なぜなら、シナリオのほとんどはミドルフェイズだからだ。
ミドルフェイズにPCが自由に動き回れたセッションは、吟遊詩人だと感じることはあまりないだろう。

「選択肢がいくつもあるかのように思わせる」
本当はシナリオには3つしか選択肢がないのに、PLにそれを示すときに、4つも5つもあるように吹聴する。
例として、以前の自分のカオスフレアでは、
「調べる場所はこんなところがある(地図を広げる)けど、他にもあるかもしれないよ」
と言うことで、PCたちはとりあえず目先の目標を探しに行き、そこにある情報だけで真実へとたどり着く。
もしもPCがそれ以上の選択肢を求めたら、即興で作ってやるが、当然そこは空振りになるわけだ。
既存の選択肢にも空振りを作っておくことで、違和感は隠せるだろう。

これは、ある意味『アドリブ力があるように見せる』テクニックなのかもしれない。
実際は、即興で作った情報源から情報は出ないわけだが。
もちろん、出せるなら、苦心して新たな選択肢を考えたPLへのご褒美として追加情報を上げるべきだし、元から1つ知っても知らなくてもいい情報源を隠しておくことで、PLに「まだあるかも」と思わせる効果もあるかもしれない。
しかし、隠した情報はやはり無理矢理誘導して見せるのではなく、隠した以上「もしかしたら、お蔵入りするかもしれない。PLがたどり着かなかったら、墓まで隠し持っていこう」ぐらいの気概が必要かも。
まあ、とにかく応用はいくらでも効く。


「GMの都合がいい順番に置き換える」
自分はけっこうよく使う手なのだが、不特定多数の場所から情報を得る場合、『ある情報が、どこで手に入っても不自然じゃないようにしておく』。
よくいう一本道シナリオ「お使いシナリオ」では、PCがある場所に行くと「そのことを知りたければ○○へ」。
○○へと行くと「そのためには××が必要で、それは□□にある」とか言われてたらいまわしにされることがある。
当然PCはGMの手の上で踊らされている感覚を感じるだろう。
そこで、とりあえず、情報収集できる地点を全て公開しておく。
PCはどこから回ろうか考えるわけだ。
このように考えさせることでPCは自主的に行動を決断したと感じる。
しかし……(こう書くとまるでだましてるようだが)……実際は、どこに言っても同じだったりするのだ。
PCには、与えたい情報が「○○」→「××」→「□□」の順番だったとしよう。
仮に1、2、3という三箇所の情報源があった場合、1→2→3と行こうが、3→2→1と行こうが、2→1→3と行こうが、出す情報の順番は「○○」→「××」→「□□」なのである。

PCは自分で決断したから、誘導されてないように感じるし、GMは自分が考えたとおりの順番でPCに情報開示できるから非常に便利。
まあ、理論的には3×3=9パターンを全部シナリオ書いておくのと同じことなんだけどねぇ。
別に全部書かなくても、少し台詞替えるだけで対応できるもんよ。
けっこう当たり前かな~と思っていたら、TSさんもよく理解してない手法だったので、ここで改めて書いてみる。


「情報は全てNPCの口から話す」
これは、感想を書いていて感じたこと。
GMがPLに対して直接発言すると、それは嘘偽りのない情報のため、強制力は非常に強いように感じる。
しかし、GMがNPCの口を借りて発言すると、それはあくまでNPCの主観を通した情報のように加工されるので、強制力は激減する。
あと、これには付随される効果があり、PLに話しかけられると、PCはその情報をどこから得たのかよくわからないので、行動に移すのが不自然になる場合があるが(往々にして時間とかの事情で不自然な行動をせざるを得ない場合も多い)、NPCからPCに情報が話されるなら、それに対する自然なリアクションとして行動できるのだ(そのNPCの発言を信じない、というリアクションもありだろう)。
そういえば、昔自分もPCのパーティに常にNPCを1人くっつけていたことがあったなぁ。
GMとして困ったら、とりあえずそのNPCに思いつきでも神の啓示でも閃きでもいいから、誘導させるという手法。
使いすぎると強引だが、言わせるNPCを毎回変えたりすることで、不自然さは出さずにPCたちを誘導することができるんではないだろーか?


こんなところかなぁ?
多分無意識にもっとたくさんのことをやってるんだろうけれども、とりあえず意識的にやってるのはこの辺かなぁ?

最近のドラマチックなFEARゲームに慣れてるPLさんは、ある程度GMに強制誘導されてることに慣れてるから、もしかしたら『吟遊詩人』なんて言葉もそのうち消えるのかもな~とか書いていて思う。
自分がGMのときに、十分練りこんだシナリオで「今日はみんな何やってもいいよ!」と言うと、大抵困惑顔をされるものだ。
聞けば「何でもしていいと言われると、何していいかわからない」と返ってくる。
道を敷いてやらなければ歩けないPLが増えてるのかなぁ(苦笑)。

PLサイドのことを考えるなら、最近は『吟遊詩人なPL』も増えてきてるよなぁ。
GMのシナリオとか、他のPLとの都合を考えずに『自分のPCの演出を語って悦に入る』タイプのPL。
演出過多なだけならいいけど、せめて周りが引いてることに気づいて欲しいもんだ。

吟遊詩人なGMも、吟遊詩人なPLも、気づけば大抵治せるもんだからなぁ。
……こんだけ偉そうなこと言っていて、自分がもしそうだったらどうしよ(がくがく)。
どこかに、無自覚な吟遊詩人をチェックする方法でもないかなぁ?

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by phirosu2 | 2008-01-21 01:42 | TRPG雑感 | Comments(0)
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